dancyu2011年7月号特集
老舗一平寿司「一平の寿司マヨ」
元祖レタス巻きの老舗が開発した、
魚介と寿司に合うマヨネーズソース"すしマヨ"見参!
宮崎県の名物料理といえば、いまでは全国区になったチキン南蛮を思い出す方も多いだろう。ではもう一つ、宮崎発祥で全国区となった料理があるのをご存知だろうか?
レタス巻き――海苔巻きにエビとレタス、そしてマヨネーズソースを巻き込んだ、宮崎以外の地ではサラダ巻きと称されているものだ。具材にカニカマやキュウリなどが使われることもあるが、重要なのはマヨネーズ味であること。
寿司にマヨネーズを堂々と使い始め、さらには寿司に合う完全オリジナルのマヨネーズソースをつくってしまった店がある。それが宮崎市内にある「寿司処 一平」だ。
寿司に初めてマヨネーズを使ったのが「寿司処 一平」だ
市内の繁華街から車で少しのところに「元祖一平のレタス巻き」を看板に掲げる「一平」がある。先代の村岡正二氏が昭和41年に創業した。
先代は人気作曲家の平尾昌晃氏と親しく、平尾氏が九州に来るときはいつも家に泊めていたそうだ。その平尾氏が体調を壊しているとき、野菜をあまり摂らないことに業を煮やし、「おいしく野菜が食べられる寿司をつくってやるから」というのがレタス巻き開発のきっかけという。試行錯誤を重ね、レタスと海老、マヨネーズを海苔巻きにした「元祖レタス巻き」が生まれたのは昭和41年のことだという。
「寿司処 一平」の看板は堂々「レタス巻き」が主役な寿司屋は宮崎にしかない
レタス巻きを囲む村岡浩司社長(左)とベテラン職人の小田浩二(中)さん、そして筆者
宮崎県内に展開する食品スーパー「Foodaly」ではこの高級マヨが飛ぶように売れたというから驚きだ。総菜コーナーでは「すしマヨレタス巻き」も大人気!
現在、「一平」は二代目の村岡浩司さんに引き継がれている。「うちは高級店ではなく大衆寿司です。親父は、子供が500円玉を握って『寿司ちょうだい』と来たときに、レタス巻きを腹一杯食べさせて帰していました。宮崎市民が気軽に食べてくれるのが一番うれしいんですよ」
運動会や恵方巻きなどの季節行事の日は、持ち帰り用のレタス巻きを求める客で店はおおわらわになる。いかにレタス巻きが宮崎市民に深く浸透しているかがよくわかる。
かくいう僕もおよそ10年前、この店で初めてレタス巻きを食べて感動したのだ。海苔巻きを斜めカットした断面には大ぶりなゆで海老、ギュッと畳み込まれたレタス、そして寿司飯が綺麗に巻かれている。甘めの醤油をチョイとつけてほお張ると、レタスのシャクッという食感と青い香り、海老の甲殻類特有の香りと甘さ、ブリンとした食感、溶け出すマヨネーズの旨味と寿司飯の酸味が渾然一体となる。その辺で食べるサラダ巻きとはまったく完成度が違うのである!
"寿司専用マヨネーズ"は酸味がポイントだった
このレタス巻きの味の要はもちろんオリジナルのマヨネーズソースにある。「マヨネーズは毎日店で仕込みます。市販品より甘さを抑えているのが特徴です。
平尾さんからも市販品だと甘いと、ダメだしをされたと聞いています」「一平」のマヨネーズは商品として売られているものよりも粘度がゆるく、レタス巻きを噛むとシュッと口に溶け出すようになっている。その味の最大の特徴は「酸味」にある。「酢飯が酸っぱいのは、魚介に酸味を合わせるとおいしいからです。一平のマヨネーズは米酢ベースですが、そこにレモンの汁をかなりの分量入れています。それと、今まで企業秘密だったんですが、レモンの皮をミキサーにかけたものも入れて爽やかさを出しています」
な、なんとそういうことだったのか!甘さではなく酸味を強めたマヨネーズ。しかもツンとくる酢酸だけではなくフルーティーなクエン酸を強めている。加えて、レモンピールを使うことで香りと味がカプセル化された粒子がマヨ中に浮いているわけだ。これが寿司専用マヨネーズの秘密だったのだ。
【 この続きはdancyu本誌(2011年7月号)をご覧ください。】
(文・撮影 山本謙治農産物流通コンサルタント)
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