小野川温泉 女将味噌(dancyu2010年12月号) Food Action Nippon
山形県の内陸部に位置する米沢駅から車で20分、清流沿いに十数軒の旅館が並ぶ小さな温泉街がある。小野小町も湯に入ったという〝美人の湯〟で知られる小野川温泉だ。今、この地で「手づくり味噌 女将仕込」、通称〝女将味噌〟を使った町おこしが始まっている。
〝女将味噌〟は、近隣の大豆農家と味噌蔵、そして旅館の女将たちが一体となってつくり出した地元ブランドの味噌だ。ことの発端は5年前に遡る。地元で愛される米沢の「カクリキみそ」を手がける味噌醸造社長・花角圭一さんの推薦により、みそ健康づくり委員会の〝美味しい味噌汁が飲める温泉地〟に、小野川温泉が認定された。
「全国有数の大豆産地として知られる土地柄と、小野川温泉女将会の団結力や機動力もあり、この機会に地元産大豆を使ったオリジナル味噌をつくり、旅館で提供しようとのアイデアが生まれました」(花角さん)。さらに、「〝湯あがり娘〟というイメージにぴったりな地元の大豆もあったんです」(旭屋旅館・佐藤安子さん)。
女将会の熱意により近隣の農家がこの地大豆の栽培を始めることも決まり、味噌づくりがスタート。花角味噌醸造の協力の下、仕込み水に小野川温泉水を使うという特色も加え、女将さんたちが力を合わせて仕込みを行なった。
こうしてつくられた味噌は、1年かけてじっくり熟成。濃くつややかな色合いに仕上がっているが、あくまでも素直な味わい。調味料として、メインである食材を引き立てる脇役的存在であり、毎日食べても飽きない味でありたいという、つくり手の想いが貫かれているのだ。
そして今や〝女将味噌〟は、小野川温泉の各旅館でさまざまな料理に活用され、なかでも毎朝の味噌汁は名物になった。炊きたてピカピカの地元産の白米とともに並ぶ香り高い味噌汁は、日本人で良かった!としみじみ実感させられる、心にしみる味わい。
小野小町ゆかりの湯治場として、1200年以上の歴史を刻む小野川温泉。
近隣の農家がつくる大豆「湯あがり娘」。これに小野川の温泉水を用いてつくる味噌はまろやかな味。
きのこたっぷりの味噌汁は地元ならではの美味。
最近では米沢市内のホテルサンルート米沢でも使い始めたほか、上杉伯爵邸などの料亭でも採用された。小野川温泉の周辺でも応援の輪が広がりつつあるのだ。
平成21年度の大豆の自給率は6%。ほとんどを輸入に頼っている状態だが、小野川温泉のように、地域が一体となった取り組みこそがニッポンを元気にし、自給率向上につながるはずだ。
(文・鈴木糸子 撮影・宮地 工)
「フード・アクション・ニッポン」とは、日本の食を次の世代に残し、創るために、民間企業・団体・行政等が一体となって
推進する、食料自給率向上に向けた国民運動です。http://syokuryo.jp
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