日和屋 天日干し鯵の干もの
素材へのこだわり、塩汁(しょしる)へのこだわり、干しへのこだわり
特に鯵(あじ)のひらきへのこだわりは干物道そのもの
全国津々浦々に干物はありますが、日本人の心の干物は何か?と尋ねれば、多くの日本人は『目刺し』か『鯵のひらき』と答えると思います。
ご飯とみそ汁と漬物と鯵のひらき。模範解答のような和の朝食、昨今の家庭では絶滅危惧メニューかもしれません。
こうした状況を招いた原因は色々と考えられますが、先ず言えることは、美味しい干物がリーズナブルな価格で手に入らないことです。
日和屋の大川三敏社長は、首都圏を中心に水産加工品(主に干物)を販売している会社の社長でもあります。築地市場の買参人(競りに参加できる)でもあり、特に干物については、人並みならぬ、こだわりがあります。
その大川社長が『理想の干物を作る』為、平成二十年に創業したのが日和屋です。
一番大切な鯵の仕入れに関しては、何段階ものこだわりチェックポイントがあります。
先ず、原魚(さばく前の魚)の状態で鮮度、形、皮目を見て選別
次に、原料を開いて、魚体の形を、身色、脂を確認
さらに、輪切りにして、背脂や脂の入り具合、身色、身の厚みを確認
最後に試食をして、味・食感・香りを確認。納得できる産地の旬の鯵を仕入れます。
沼津伝統の干物製法 塩汁(しょしる)へのこだわり
日和屋では、先ず魚を丸のままで20%塩水に漬け、外から下味を付け、それから、開き、下拵え、調味、干しの行程と流れます。特に、調味に使われる塩汁(しょしる)は継ぎ足し・継ぎ足しで、日和屋の味の基本となっています。その為、常に5度に保たれ、魚に絶妙な塩気と味を入れます。
もちろん、塩汁に漬ける前には、開いた魚を富士山の伏流水(井戸水)で血抜きし、さらに、先の細い掃除機の吸い込み口のような機械で、残った血合や内臓などを徹底的と取り去ります。この手間暇で仕上がりが格段に良くなります。
下拵えを十分にした魚は、日和屋オリジナル仕様の乾燥機と屋上の干し場で天日干しされ完成します。
沼津のお天道様と駿河湾の風が絶妙な加減に干し上げます
日和屋の工場内には様々な仕掛けが施され、虫の進入と菌の繁殖を防いでいます。干し場は屋上にありますが、工場とは直通のミニエレベーターで上げ下げします。つまり、天日干しにありがちな不衛生さは欠片もないです。
見よ!この脂・・干し場の下にも脂がしたたる
私が訪ねた日も絶好の干物日和。たくさんの鯵が味を凝縮しながら、余分な脂をにじませていました。あまり暑いと魚が傷んでしまいます。 その為、火加減ならぬ日加減には細心の注意をしています。
原材料:鯵(アジ)・塩 以上!無添加だから多少の変色もあります
日和屋の干物の骨側の血合部分は黒く変色しています。どんなに丁寧に仕事をしても、骨の髄に残る血は取りきれません。そこが開きにすると透けて黒く見えます。 黒く変色しないように添加物を使うところも多いですが、日和屋は昔ながらの干物の味にこだわり、無添加に徹しています。
小ぶりの鯵のひらきは朝ごはんの友、室鯵(ムロアジ)の癖は酒を呼ぶ
定番の鯵のひらきですが、やはり、手のひらサイズの小ぶりが嬉しいです。小ぶりなので、骨を気にしない方は、頭から食べられると思います。
『ほくほくの鯵のひらき』を一口。熱々のご飯を『ばくばく』。味噌汁を『ごくっ』 糠漬けでもあれば言うことなしです。 日和屋の室鯵のひらきも美味。独特なムロアジ的癖は朝食というより、夜の干物です。夜の干物と言えば、酒肴です。日和屋の室鯵はしっとりしていて、とても美味です。
また、築地市場で仕入れる極上の魚で作る、こだわり干物の品ぞろえは流石。 余分なものを加えず、シンプルで魚の味がストレートに伝わる干物は、干物であり、最高に丁寧な下ごしらえを済ませた魚とも言えます。 先ずは定番の朝ご飯用の鯵のひらきを堪能してみてください。その美しい姿と絶妙な味に納得だと思います。
(文・株式会社 食文化 代表取締役社長 萩原章史)
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