漁が解禁となる8月中旬以降、漁師たちはさんまの群れを追いかけます。
中でも、さんま船の中でも、例年国内売上高が上位5位以内に入ってくる船が気仙沼にはあります。
名前は第六安洋丸。毎年どの船よりも漁を早く開始する、気仙沼を代表するさんま船です。
地元の船会社によると、安洋丸は獲るスピードがとにかく早いのだそう。網への誘い込み、網のあげ方、さんまと氷と水を手早く傷つけずに船底のカメに入れる手際が際立つといいます。
安洋丸は、さんまの光に集まる習性を利用し、集めたさんまを大型ホースで生きたまま海水ごと船に吸い上げる「棒受け網漁」を行っています。
安洋丸は新しい技術を取り入れることにも積極的。
今期から集魚灯にLEDパネルを導入しました。
LEDの光は海中深くまで届くため、多くのさんまを集めることができるとのこと。魚群探知機などで群れを探し、より大きなさんまを狙うのも特徴です。
さんまが寄ってくる集魚灯を点けた瞬間さんまが海面に沸く。激しく水しぶきがあがり、一帯が白く沸き立つ。その光景を見る度に、気合が入るのだそうです。
活きのいいさんまを届けたいという漁師たちの想い。彼らの働きが三陸産さんまのクオリティを支えています。
阿部長商店の買受人は、その日あがった魚の大きさ、鮮度、美しさなどを目で確かめていきます。ですが、魚市場に並ぶさんまは、水揚げされたうちのごく少量の見本のみ。
それだけでは判断できないので、できるだけ傷のない、大きなさんまを仕入れるため、船からトラックに積み替える作業に立ち会い、どの位の割合で大きいさんまが入るのかなど、その場の様子からも判断します。
他の市場のさんまの相場や日々のデータチェックにも余念がありません。
毎朝5時半には、魚市場に来て、全国のお客様に納得のいくさんまを届けるため、真剣に買い付けをおこなっています。
そして、青い鱗が残っているさんまは大切に扱われてきた証拠です。さんまの鱗ははがれやすく、水揚げや運搬の際にこすれあうとすっかりとれてしまいます。また、さんまは鮮度が落ちてくると、目が充血し、黄色くなってきます。
体は大きくても、決して大味ではありません。サンマは魚体の大きさに比例して美味しくなると言いますが、食べるとそれを実感します。
お刺身も美味しいですが、脂がのったサンマはやはり焼きがオススメです。炭で焼く場合は、脂が直接炭にかからないようご注意ください!
どんなに良いさんまを仕入れてきても、その後の管理が良くなければ、意味がありません。鮮度を落とさない工夫が阿部長商店にはあります。
その工夫の一つが、発送直前まで、手を触れずにさんまを処理できること。阿部長商店の大船渡工場はHACCP対応型工場です。

HACCPとは、原料の入荷から製造・出荷までのすべての工程において、あらかじめ危険性を予測し、それを防止(予防、消滅、許容レベルまでの減少)するための重要管理点(CCP)を特定して、そのポイントごとに継続的に監視・記録(モニタリング)し、異常が認められたらすぐに対策を取り解決する、不良製品の出荷を未然に防ぐことができるシステムです。
魚市場で買いつけたさんまは、船から大型の箱に移し替え、工場に運びます。
箱からコンベアに移し、一尾ずつ自動計量し選別を行います。この選別作業は1分もかかりません。
大船渡工場では生鮮さんまの出荷の際、箱詰めのみ手作業ですが、他はすべて機械化されています。手で触らない分鮮度が保たれるのです。
昭和36年4月に気仙沼に鮮魚仲介業として、産声を上げた阿部長商店は、初代社長(現在の阿部会長)がリアカーの行商から叩き上げた水産加工業者です。
あとひと月ほどで創業50周年という平成23年3月11日に、気仙沼・石巻・南三陸・大船渡に計9か所あった工場のうち7か所が大震災で操業停止状態に陥りました。
特に本社のあった気仙沼では、1m近い地盤沈下で施設一体が海水に覆われました。復旧には困難を極めましたが、昨年は、なんとか1台だけ復活したさんま選別機をフル稼働させ、業務再開を果たしました。
今年は、選別機もさらに3台追加し、全国のお客様へ、復興に向け歩み続ける南三陸のさんまをお届けいたします。
(写真右:大船渡の復活のシンボル、阿部長の大船渡工場)

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